2011/10/10

第8回 田所さん、あるいは子供の嫌いな人に

先日惜しまれつつ終了したNHK朝の連続テレビ小説「おひさま」に出て来た、田所さん(紺野まひる)が好きだった。


田所さんは、主人公陽子(井上真央)が勤めた食品会社の経理の人だ。
陽子が職場に連れてきた赤ちゃんが泣くとギロリと睨んだりする。
職場じゃさすがに厳しいと思うが、田所さんは最初は子供が嫌いな人なのかなと思った。
それに加えた紺野まひるのぶすっとした表情。一種のぎこちない愛らしさを感じて目を惹かれた。


舞台は、当時1947年。
「子供が嫌いな人というのは、人間として女性として欠陥があるかのように言われ、
随分辛い思いをしたのではないだろうか」と言う事を思った。
現代では少子高齢化にともない、人間が随分利己的になってきたというか、
子供手当を出すくらいなら俺に手当を出せと言う感じで、なんだか世の中の雰囲気全体が子供の事を冷遇するようになってきたような気がする。子供を護るのは親しか居ないんだな、という感が強まってきた。当たり前じゃんと言われそうだ。そういわれれば基本的にはそうだし、仕方がないんだろうけど、何となく複雑であはある。
けれど、田所さんのような人がひっそりと身を隠す?には、適した環境かなと思う。

私自身は、結婚も出産もしていない。子供は嫌いじゃないけどちょっと苦手だ。
生と死の問題について、ひどく単純な深さで立ち会っているような目が恐ろしいからだ。


とは言うものの、全編ぎっちり見通した方々にはお分かりであろう事、
田所さんは子供が嫌いというか、祝言の翌日に夫が出征し帰らぬ人となるという、とてもつらい経験があるのだった。
現実にそのような人に出会えば、胸も痛むだろうけれど、
フィクションとしては、そのような引用符つきの「物語」によって人物像から視聴者へ納得させる理由のある事を、私ならばのぞまない。
深い理由等全く無く子供が好きじゃない人であったり、冷淡な人も居て、そういった人々を含めた「人間のかたち」について共感を求める卑近な感情の一切を排除して、考えるべきではないのか?
しかしながら共感を排除して魅力的なドラマ成立させるのはとても難しい事だ。
朝からちゃぶ台で納豆捏ねながらそんなような事を一人でごちゃごちゃ言っていたんだけど、やっぱり、そんな辛い事の会った田所さんには心が痛むし、陽子が席をはずした時に、そーっと赤ちゃんを覗き込む田所さんが文句無しに可愛いすぎてやばい。ややこしいことはやめにしよう。

個人的には、田所さんに特にこれと言った辛い経験がなくともあのままのキャラクターで、全然構わないのだ。

社会全体や福祉について力なくも考えるとき、私は子供と、子供の嫌いな人について考える。
全ての人の幸せを望むのは、途方もなく難しい事だ。



(2011.10.11 配信)